2014年6月27日金曜日

イタリア代表の崩壊、ロッカールームで何があった?

 バロテッリは更生したと思われていた。以前のようにトラブルを引き起こすことはEURO2012決勝戦における後悔からなくなり、チームメイトから愛されるバロテッリになっていた。しかし、ウルグアイ戦のハーフタイム、チームは崩壊した。
 前半に危険なタックルによってイエローカードをもらったバロテッリにプランデッリ監督はハーフタイム、「態度を改めろ。そうしないなら10分で交代させる。」と告げた。しかし、バロテッリは「俺を信じろ、束縛をするな」と反論、プランデッリは「黙れ」と一喝して後半の最初から彼に代えてパローロを投入することに決めた。
 それでも悪態をつき続けるバロテッリに対し、遂に堪忍袋の緒が切れた選手がいた。この日初めて先発出場を果たしたDFレオナルド・ボヌッチだ。ボヌッチは「馬鹿野郎!黙ってここから出て行け!」と
、バロテッリを文字通りロッカールームからつまみ出した。彼に続き、デ・ロッシがさらに友好的でない口調でバロテッリを叱責したという。
 このハーフタイムにはもうひとつの物語がある。ロッカールームの出来事を私たちは話を聞くまで、少したりとも想像しなかっただろう。ウルグアイ戦の後半のアッズーリは、いつものアッズーリそのものだったからだ。グチャグチャになったロッカールームをキャプテンのブッフォンが収集していた。選手たちが最悪のムードでピッチに戻ろうとした直前、ブッフォンは「このままではダメだ。目を覚ますぞ。」とチームを鼓舞した。

 0-1でウルグアイに敗れ、イタリア代表のワールド・カップが終わった。この大会を最後に代表引退を表明していたピルロが、試合後のロッカールームで挨拶をすることになった。しかし、ここで、定例のドーピング検査の対象がピルロになり、彼は2時間ほどロッカールームに戻ることができなかった。選手たちは、それぞれの思いを胸に秘めながら、12年間、112試合に渡りアッズーリを引っ張ってきた男の帰りを待っていた。しかし、バロテッリはロッカールームを出て、バスの中で一人、音楽を聴き始めた。

 そのとき、ついにキャプテンのブッフォンまでもが愛想を尽かせた。
前に出て戦うのはいつもベテランだ。もっと彼らをリスペクトしなくてはならない。ピッチで必要なのは、「やる」ことであり、「やれるかも」や「やるはず」では不十分だ。誰がいて、誰がいなかったかは見ての通りだろう

 また、試合後のプランデッリのコメントもある。
バロテッリはいつ熱くなり、いつ冷静になるのか分らない。彼はすでにイエローカードをもらっており、10人で戦うことは避けたかったので交代した。しかしそうした采配によってチームは負けた。私は責任をとって辞職する。

 その後、イタリアメディアがこれを受けて反バロテッリ色が強くなり、世論もそちらへ傾くと、バロテッリからもコメントが出された。
今回は自分だけの責任にはさせない。マリオ・バロテッリは代表のためにすべてを捧げたからだ。気持ちの面では何も間違えなかった。だから他の言い訳を探した方がいい。私は自分が国のために全力を尽くしたことを誇りに思っている。


 こうして、イタリア代表はブラジルを離れた。イタリアの記者たちは、空港で彼らを待ち受けた。コメントをしたのはブッフォンとピルロ、アルベルティーニだ。当の本人、バロテッリはヘッドホンをつけたまま黒いバンへ移動していった。
ブッフォン「バロテッリについて?サッカーの話しかしない。僕たちは醜態を晒してしまった。」
ピルロ「バロテッリが今後アッズーリに呼ばれるか?それは僕にはわからないよ。」
アルベルティーニ/イタリア・サッカー協会副会長「新しいイタリア代表にバロテッリがいるかどうかは分からない。彼が価値のある選手であれば呼ばれるし、そうでなければ別の選手が呼ばれるだけだ。しかし、今回の敗退の責任がバロテッリだけにあるというのは間違っている。」

 イタリア代表一行がリオ・デ・ジャネイロからマルペンサ国際空港に着くまでの間に、和解に向けた一つの動きがあったことを、同乗していたジャーナリストがスクープしている。バロテッリは飛行機の中で、初めは他の選手たちと同じ席に座ることをせず、一人離れてフィアンセと共にいた。だが、その後プランデッリの方へ出向き、謝罪をしたという。プランデッリが「反省をしたか?」と尋ねると、バロテッリは「はい。私が間違っていました。」と返答した。
 ただし、監督とは和解したものの、チームメイトとの亀裂はまだ解消されていない。帰りの飛行機の中でバロテッリが選手たちと話すことは一度もなく、マルペンサ国際空港で他の選手たちが皆、飛行機からバスに乗り換えた一方で、バロテッリはフィアンセと共に別に用意されていたミニバンへ乗り込んだ。


 現在、イタリアの世論は大方、反バロテッリに傾いている。アーセナルへの移籍が噂されているが、バロテッリがイタリアに失望してしまえば、ミラノを離れてロンドンへ行くこともあるかもしれない。尤も、アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督は今回の一連の報道がされていく中でバロテッリへの関心を完全否定した。
 バロテッリの未来はどうなっていくのか。まずはガッリアーニACミランCEOを始めとする自分の味方に対して素直にならなくてはならない。また、アッズーリのチームメイトに対する謝罪も必要だろう。
 特にブッフォンとボヌッチだ。実はイタリア代表は、もう一人の悪童が問題を起こしていた。カッサーノは宿舎の食堂で、唐突に怒鳴り、自身の目の前にあったグラスを割ったという。騒然となったその場所を収めたのがブッフォンであった。ブッフォンがどれほどチームの平穏を保とうと必死になっていたかをチームメイトであれば知っていたはずだ。
 また、ボヌッチはいつもバロテッリの味方だった。EURO2012のアイルランド戦、ゴールを決めたバロテッリはゴールパフォーマンスの途中、挑発的な態度で何かを叫ぼうとした。何を言おうとしたのかは不明だが、場合によってはレッドカードをもらうかもしれないこの行為を止めたのがボヌッチだった。彼はバロテッリの口を塞ぎ、冷静に、しかし真剣に彼を諭した。それから2年、ついにボヌッチまでもがバロテッリをロッカールームから追い出そうとしたのだ。

 イタリア代表の新監督は、マンチーニになるだろうとの予想が最も強い。マンチーニと言えば、マンチェスター・シティを指揮していた時代、バロテッリの面倒をよく見た監督だ。マンチーニなくして、今のバロテッリは無かったはずである。彼なら、おそらく新しいチームでもバロテッリを使いたいと考えるだろう。それを実現させるためには、まずはチームメイトとのわだかまりを解消することが急務である。

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