2014年7月6日日曜日

セリエA新シーズンの注目の若手選手アンドレア・べロッティ

 毎シーズン、「期待の若手」と呼ばれる選手がいる。昨シーズンはサッスオーロのドメニコ・ベラルディとアレッサンドロ・フロレンツィなどになるのだろうか。その期待に応えられた選手はさらなるビッグクラブへ移籍し、トップ代表に招集されるなど、スター選手へと一歩一歩近づいていく。3年前、セリエBで得点王になったインモービレはワールド・カップのメンバーに選出され2試合に出場、今年6月にはドイツの強豪ボルシア・ドルトムントへ1900万ユーロで移籍した。

 2014-2015シーズンの「期待の若手」は誰であるか。
 エラス・ヴェローナから3000万ユーロ前後の高額な移籍金でユヴェントスないしはACミランに移籍するであろうフアン・マヌエル・イトゥルベはその筆頭となる。ACミランとプロ契約を結んだ16歳のFWマストゥールも、定期的に試合に出られるかはまだ分からないが期待してみたい。ACミランで言えば、MFのクリスタンテとサポナーラも注目の選手だ。またユヴェントスが2年前、ブッフォンの後継者として獲得したGKニコラ・レアーリが今シーズン、満を持してセリエAに初挑戦する。先を越された同年代のバルディやペリンに劣らない活躍をできるのか、目を離すことができない。
 そんな中でも私が特に興味関心を持っているのが、パレルモのFWアンドレア・べロッティだ。

 先に言うと、私はまだ彼のプレイを見たことがない。ここに書くこと以外、彼のことは何も知らない。だからこそ、彼のことが気になる。早く彼のプレイを見てみたいという、そんな気持ちを抱いている。
 彼を知ったのは、U21イタリア代表のメンバーを見ていたときだ。インモービレ、デストロ、ボリーニ、ガッビアディーニを輩出した次の世代の選手について知りたいと思い、調べていた。20歳前後の選手が集まっているこの世代の代表には、ベラルディを除けば、すでにセリエAで大活躍をしているような選手がいるわけではない。ただし、大半の選手はビッグクラブに所属している。ユヴェントス、インテル、ミラン、ローマを筆頭に、下部組織やレンタル移籍など何らかの形で彼らにツバが付いている。しかし、その中でもこのベロッティは異質である。
 この観点から、まずは彼の経歴について見てみたい。ベルガモ州ロンバルディ地方に生まれた彼の本格的なキャリアは、その地で二番目の大きなクラブであるアルビノレッフェで始まった。なおこの地方の最大のクラブは、優秀な若手を多く輩出することで有名なアタランタになる。
 2012年3月にプロデビューを果たし、その後は途中出場で定期的にプレイをした。翌2012-2013シーズンはチームのエースへと成長し、レガ・プロ・プリマ・ディヴィジョン、俗に言うセリエC1で14ゴールを取った。この活躍によっていくつかのクラブから関心を集めた彼は、2013-2014シーズンはパレルモへレンタル移籍をした。その前シーズンをセリエAで戦っていたパレルモでは最初はポジションを掴めずにいたが、9月24日に元ミランのMFディ・ジェンナーロに代わり途中出場すると、早速その試合でアシストを記録し、その後は半ばスタメンとなって24試合10ゴールの働きをした。今季2014-2015シーズンからセリエAに復帰するパレルモは、レンタル移籍だった彼を7月からチームへ完全移籍させ、彼と共に新しいシーズンを戦うことに決めた。
 これらの活躍が評価され、各世代のイタリア代表にも招集されている彼だが、現在のU21では4-2-3-1の布陣の下で1トップでプレイしている。

 続いて、彼のプレイ・スタイルについて見て行きたい。今までのことも含めてこれまでは主にWikipediaを参考に見てきたが、まだ芽が出ていない若い選手には日本語版のページなど存在せず、英語版でも上記のような少しの経歴しか載っていない。しかし、イタリア語版のベロッティのページには、その期待がよく分かるほどに紹介されているのだ。
彼はセカンドトップを始めとし、前線のあらゆるポジションでプレイができるFWだ。ベロッティがユース世代でプレイしたアルビノレッフェのテクニカル・コーチ、エミリアーノ・モンドニコは彼について次のように語っている。「最高の選手だ。一目見て、彼の才能に気付いた。パワーもあれば、プレイの質も高い。古典的なストライカーがそうであるように、彼はゴール前でこそ上手く、賢く動くことができる。そう考えると彼はストライカーとしての性格が強いのかもしれないが、彼はウィンガーでもセカンドトップでもプレイができる。その理由は、先に挙げたようなゴール前での巧さに加えて、常にゴールを狙う姿勢にあるのだろう。」それから、U20イタリア代表の監督アルベリゴ・エヴァーニは「彼には二つの仕事ができる。つまり、攻撃での仕事に加えて、チームの最初のDFとして大きな貢献をしてくれるんだ。」と彼を評価した。
以上のWikipediaの紹介を見ると、彼にはFWとしての能力が高いのに加えて、 守備面での貢献度が高いのがよく分かる。アルビノレッフェのモンドニコは「古典的なストライカー」と評したが、この守備面での貢献度を考えるとそうとは言えないかもしれない。



 そしてコリエレ・デッロ・スポルトにちょうど今日、パレルモへの正式な入団に際しての彼のインタビューが掲載された。
私が望んでいたのは自分が重要な役割を担える強いチームであり、パレルモはそれにピッタリだ。今の私には試合に出ることが大事だ。
幼少期のこと
子供の頃からずっとボールを追いかけて育ってきた。学校から帰ればすぐにリュックサックを背負って、サッカーをしに出かけた。ご飯を食べに家に帰ったら、またサッカーをしに行った。試合も沢山見てきた。勉強もちゃんとしたよ。サッカーはいつまでもできるものじゃないと父に言われてきたからね。父は正しかったと思う。サッカー選手を夢見る少年に言いたいこと?自分を信じて、努力をし続けることだね。
僕はアルビノレッフェでキャリアをスタートさせた。アタランタの入団テストには落ちてしまってね。だからこそ父は僕に「お前は今、幸運な立場にいるんだ。お前のようにチャンスに巡りあうことができずに夢を諦めた多くの人がいることを忘れるな。」と言ってくれる。僕はそれを心に留めておくようにしている。ここに来るまでに沢山のつらい思いをした。父がいなければ、僕は今ここにいないだろう。友達が遊んでいる間、僕はキツい練習ををしていたし、泣いたこともあった。それでも家に帰ると父が僕を励ましてくれた。家で食べるシーフードラザニアが美味しかったな。それを一緒に食べていた兄は、今はシェフをやっているよ。もちろん彼もサッカーは大好きだ。
パレルモでの暮らしについて
今はパレルモに住んでいる。故郷のベルガモに比べると、パレルモが危ない街であることは確かだ。でも、ここに住んでいる人たちは素晴らしいよ。僕は今、楽しいんだ。ファンの人たちも面白いね。階段を降りたところで、ファンの人たちが僕の活躍を褒めてくれたりする。それに、実は僕はここで一度もコーヒーにお金を払ったことはないんだ。ベルガモではそうはいかない。両親に「ここにはマフィアがいるんだよ」と冗談で言ったら彼らはすごく心配してしまった。でも、一度来たらそんな心配はいらないことに気付いたと思う。南イタリアは本当に良い所だよ。
20歳でどう一人暮らしをしているか?僕にとっては初めての一人暮らしだけど、洗濯も料理も自分でしているよ。料理については兄にアドバイスをもらっているから、だいぶ上手くなったね。最初の頃は困ることもたくさんあって、両親が助けに来てくれたこともあった。休みの日はテレビゲームをしたり、映画を観たりしている。僕はシャイな人間だから、ずっと家にいるほうが性に合っているんだ。好きな映画や本?映画はアクションとコメディーが好きだね。本は最近はあまり読まないんだ。でもサッカー選手の伝記は好き。特にお気に入りなのがイブラヒモヴィッチとサネッティの本だ。
サッカー選手として
インモービレ、ヴェッラッティ、インシーニェを目標にしたい。彼らは皆、セリエBからトップレベルの選手へと成長した。僕も彼らの後を追わないといけない。僕のアイドル?それはシェフチェンコだ。彼は偉大なストライカーであると同時に、人間としても尊敬できる。
昨年の怪我について?あれは辛かった。でもチームの人たちが支えてくれたよ。イアキーニ監督が僕に電話で、僕をずっと待つと言ってくれたときは嬉しかった。そのお陰でリスクを冒すことなく全快に向けて治療することができた。
僕のプレイがカシラギに似ている?シュートが好きということでは似ているかもしれないけど、それは誰しもが持っている特徴だ。僕は自分が彼に似ているとも思わないし、他の誰かの真似をしようとも思っていない。そうすることが僕にとって良いことだと思っているから。だからこそ、僕は色んなポジションでプレイがしたい。もちろん、子供の頃から攻撃的なポジションが大好きだったけど。
感謝をしたい人と新しいシーズンに向けて
アルビノレッフェでの経験は素晴らしいものだった。今でもベルガモの友達と話したりするためにFacebookを使うし、Twitterでも彼らのことをフォローしているよ。なによりもモンドニコ監督には感謝しないといけない。彼は僕のことをずっと信じてくれた。
僕を評価してくれたパレルモにも感謝したい。お金もかかるし、僕のような選手を獲得するのは大変な仕事だったと思う。でもこのような重要なチームで僕は上手くプレイすることができた。これから僕はセリエAに挑戦する。楽しみで仕方がない。
今はものすごく熱意に溢れている。早く試合をして、セリエAでも良いプレイができることを示したい。パレルモは最高のチームだ。ここには選手だけじゃなくて、「人間」がいる。試合に勝つために重要なのは選手が良い働きをすることだけではない。ベンチからのサポートも欠かせないんだ。だからこそ、このチームは最高だ。

 サッカー選手特有の野心家としての面と、家族とベルガモの風土が生んだであろう謙虚な一面が、彼の言葉から垣間見える。彼はイタリアの超新星となりうるのだろうか。2016年のリオ五輪に向けて調整が始まる中、2014-2015シーズンはこの20歳のFWの活躍に期待してみたい。

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