2014年5月16日金曜日

イタリア代表メンバー30人のプロフィール

 5月13日、イタリア代表のワールド・カップのメンバー30人が発表された。6月初にここから23人に絞られることになる。イタリア代表での出場経験のない選手が選出される一方で、ここ数年は常に呼ばれ続けていたアストーリやジャッケリーニ、クリッシートがメンバーから漏れているなど、いわゆる「サプライズ」の多い構成となった。注目されていたベラルディは、選出が見送られた。


GK
・ジャンルイージ・ブッフォン(ユヴェントス)
言わずと知れた、イタリア代表の守護神。ワールド・カップは1998年大会に始まり、5回目の出場となる。2010年、カンナヴァーロが代表を引退して以降はキャプテンを務める。ユヴェントスでは、2012-2013シーズンから、退団したデル・ピエロに代わりキャプテンに。1998年のワールド・カップ以来、EURO2000を除きすべての大会に出場し、今大会で10大会目となるが、これは元ドイツ代表のローター・マテウスに並ぶ世界記録である。

・サルヴァトーレ・シリグ(パリ・サン・ジェルマン/フランス)
2009-2010シーズン、21歳頃からパレルモでレギュラーに定着し、2011年にパリ・サン・ジェルマンに移籍。代表初召集は2010年2月で、2010年ワールド・カップ後はコンスタントに代表に召集されている。長らく代表ではサードGKの立場だったが、ヴィヴィアーノやマルケッティを押しのけ、ここ数年はセカンドGKとして定着した。

・マッティア・ペリン(ジェノア)
まだ21歳と若い選手だが、セリエAは今年で2シーズン目の挑戦となる。セービング能力に定評があり、ブッフォンの後継者に最も近い選手の一人だろう。


DF
・ジョルジョ・キエッリーニ (ユヴェントス)
フィオレンティーナ時代は中田英寿と共にプレイしたおり、中田はキエッリーニの最も尊敬する選手の一人である。もともとは左サイドバックとしてプレイしていたが、2008年頃からはセンターバックにコンバートされた。イタリア代表ではセンターバックと左サイドバックを兼任している。タックルのスキルは世界一と言えるが、熱くなりやすくカードをよくもらってしまう。オーバーラップも彼の魅力のひとつである。

・アンドレア・バルツァーリ(ユヴェントス)
ワールド・カップは2006年大会以来、二回目の出場となる。2010年は召集されなかった。かつては「期待の若手」であったが、その後低迷期に入った。ドイツ・ヴォルフスブルク移籍により才能をふたたび開花させ、2010年1月にユヴェントス移籍。当初は控えのCBとされていたものの、レギュラーを奪取した。カンナヴァーロを彷彿とさせる高い対人スキルと鋭い観察眼は世界最高と言える。

・レオナルド・ボヌッチ(ユヴェントス)
ワールド・カップは2010年に続き二回目の出場となる。インテルのユース出身の選手だが、バーリで注目を浴びたことをきっかけに、1550万ユーロでユヴェントスに移籍した。ユヴェントスではすでに4年間不動のレギュラーを務めているが、年齢はまだ27歳と若い。ロングパスの正確さはイタリア随一であり、ユヴェントスの3バックはボヌッチ抜きには成り立たない。あらゆることを高いレベルでこなすことができる理想的かつ現代的なセンターバックだ。

・ガブリエル・パレッタ(パルマ)
アルゼンチン出身のイタリア人、リヴァプールやボカ・ジュニオルズでのプレイ経験もある。今年28歳となる選手だが、イタリア代表は2014年3月に初招集となった遅咲きの選手。今夏、ユヴェントスへの移籍が噂されている。対人の守備能力が高く、ロングフィードもこなす大型DFだ。

・アンドレア・ラノッキア(インテル)
2009-2010シーズン、バーリでのラノッキア・ボヌッチのセンターバックは、ネスタ・カンナヴァーロのそれと比較され、高い評価を受けた。しかしその後、負傷離脱を機に、相方のボヌッチが代表に召集されユヴェントスへの移籍も果たすなどスター選手への階段を登っていく一方で、ラノッキアは後れを取っていた。2010年11月にイタリア代表にも召集され、2011年には名門インテルに移籍をしたたが、ミスの多さを懸念され、代表でのレギュラーの確保には至っていない。196cmの高身長を武器にプレイし、タックルの技術も高い。

・マッティア・デ・シーリオ(ACミラン)
この21歳の若手DFは、所属クラブとポジションを同じくするパオロ・マルディーニとよく比較される。クラブでは攻守に渡り比較的に安定したパフォーマンスを披露するも、代表でのプレイはいまだ安定しているとは言いがたい。代表初招集は2013年3月で、昨年行われたコンフェデレーションズカップにも出場した。今シーズンは怪我に悩まされた。

・イグニャツィオ・アバーテ(ACミラン)
U-21イタリア代表ではウィングFWとしてプレイ、ACミランでもかつてはMFでの出場が多かったが、2009-2010シーズン頃からサイドバックにコンバートされ、次第にイタリア代表の常連となった。スピードを売りにした攻撃的な能力を評価されているものの、クロスの精度は低い。EURO2012やコンフェデレーションズカップでもイタリア代表に召集されている。

・クリスチャン・マッジォ(ナポリ)
32歳のベテランで、かつては現インテル監督マッツァーリの下、サイドMFとしてプレイしていた。2008年の代表初召集後はメンバーに定着し、2010年のワールド・カップにも出場した。攻撃に関してはイタリアのサイドバックでもダントツの実力を持つが、守備においてはミスが目立つ。今季からベニテス新監督となったナポリでサイドバックに起用されたため、かつての弱点がいくらかでも改善されていればイタリア代表にとっては大きな力になるだろう。

・マッテオ・ダルミアン(トリノ)
ACミラン出身、24歳の若いサイドバックで、2011年からトリノでプレイしている。イタリア代表での出場経験は無く、彼の召集は今回の最大のサプライズと言える。戦術理解度が高く、ミスも少ない。サイドバックとしては、デ・シーリオ同様に、左右両方でプレイでき、またセンターバックとしても起用が可能。今回のメンバーの中では最も使い勝手の良いDFだろう。
今季はセリエAでウイングバック及びサイドバックとして28試合、サイドMFとして3試合、センターバックとして5試合、合計36試合に出場し、3アシストの活躍をした。

・マヌエル・パスクアル(フィオレンティーナ)
今年33歳のベテラン選手。17~18歳でプロ契約をする選手が多い中、22歳までの長いアマチュア時代を過ごした。プロ入り後はすぐに左利きのサイドバックとして高く評価され、リッピ監督の下、2006年に24歳でイタリア代表にデビューした。しかしその後しばらくは代表から遠ざかり、ふたたび召集されるのは2013年のこと。プランデッリがフィオレンティーナで指揮をとっていた頃に最も信頼していた左サイドバックである。攻撃的な技術が評価されており、左足から上げるクロスの精度の高さはイタリア人の中で最も高いと言える。


MF
・アンドレア・ピルロ(ユヴェントス)
「レジスタ」の代名詞とされる彼の類まれなるボール・コントロールは説明するまでもないだろう。ワールド・カップは2006年、2010年に続き三回目となる。2010年大会は怪我で離脱し、決勝トーナメントから出場する予定だったが、イタリアが窮地に立たされると急遽グループステージ第三戦で途中出場した。ACミラン時代の弱点だった怪我の多さも、ユヴェントス移籍後はほぼ解消された。ユヴェントスのセリエA三連覇を最も支えた選手である。

・ダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)
ユース時代からローマ一筋のロマニスタ。その風貌から「グラディエイター(剣闘士)」と称される。MFとして必要な全てのスキルが世界トップクラスであり、彼を世界最高のMFと評価する人も多い。EURO2012ではセンターバックとしてもプレイしたが、彼の攻撃力を活かしたかったプランデッリは、3バックの布陣がよく機能していたにも関わらず、その後デ・ロッシをMFに置く4バックの布陣に戻した。ワールド・カップは2006年、2010年に続き三回目。2006年大会ではグループステージのアメリカ戦で肘打ちをしたことでレッドカードをもらい、4試合の出場停止処分となる。今シーズンも、試合中の悪質なプレイが原因で代表招集が見送られることがあった。良くも悪くも、熱くなりやすい選手だ。

・クラウディオ・マルキージオ(ユヴェントス)
ユヴェントス・ファンの父親の下に生まれ、7歳からユヴェントスに所属する生粋のユヴェンティーノ。難しいプレイも簡単にこなしてしまうボール・テクニックは、ピルロにも劣らない。MFの全てのポジションを経験した高い万能性を持ち、今季はフランス代表のポグバの台頭により一時は2008年以来はじめてレギュラーの座を奪われたが、その後中盤の底としての才能をも開花させた。2009年の初招集から、怪我を除けば、一度も漏れることなく常にイタリア代表に呼ばれている。

・リッカルド・モントリーヴォ(ACミラン)
ボール・テクニックが高く、かつてはピルロの後継者と目されていた。しかし、他の多くの後継者候補とは異なり、モントリーヴォはピルロにはない技術を磨きながら成長した。フィオレンティーナのキャプテンとなった後に2012年、ACミランに移籍。アンブロジーニやガットゥーゾらが退団した今シーズンからはミランでもキャプテンを務めるようになる。代表には2007年から召集されており、EURO2008では予備メンバーに選ばれた。彼もピルロ、デ・ロッシ、マルキージオと同様に、プランデッリ監督が常に頼りにしてきた選手であり、2010年からは全ての大会に出場している。

・チアゴ・モッタ(パリ・サン・ジェルマン/フランス)
彼が最初に注目されたのはバルセロナでキャリアをスタートさせた20歳頃のときである。チャビ・エルナンデスやダービッツ、デコといった選手たちの後ろ、中盤の底でプレイした。その後アトレティコ・マドリッドを経てインテルに移籍し、チャンピオンズ・リーグ優勝に貢献した。かつてはU-23のブラジル代表でプレイしていたものの、フル代表はイタリアを選択した。2011年の初招集から代表に定着し、EURO2012にも出場。一時は代表のメンバーから外れるものの、今季から復帰した。バルセロナ以来、クラブ・チームでは中盤の底で守備的な役割をしているが、イタリア代表ではトップ下でプレイすることが多い。

・アルベルト・アクィラーニ(フィオレンティーナ)
ユース時代を過ごしたローマで才能を開花させた後、リヴァプールでは不遇のシーズンを過ごすが、ユヴェントスに加入後は再び高く評価される。ACミランを経てフィオレンティーナに移籍し、モントリーヴォの穴を埋めた。プレイは素晴らしいのに怪我をしやすいという意味で「スワロフスキー」というあだ名が付けられているものの、今シーズンは一年を通して高いパフォーマンスを披露し続けた。

・マルコ・ヴェッラッティ(パリ・サン・ジェルマン/フランス)
2011-2012シーズンのセリエBにおいて、ペスカーラのセリエA昇格に貢献した。彼もまた、モントリーヴォらと同じように「ピルロの後継者」と呼ばれた選手の一人であり、ボールコントロールやパスの能力が高い。2012年夏、ユヴェントスへの移籍が目前となっていたが、交渉が難航している間に、パリ・サン・ジェルマンが乗り出し、1200万ユーロで彼を獲得した。一部リーグでのプレイ経験のない選手としては異例の値段だ。クラブでは、世界的に高い評価をされる選手が多く所属する中、若干21歳ながらポジションを確保し、破格の移籍金に充分に見合う働きをしている。EURO2012の予備メンバーに選出されていたが、本戦に進むことはできず、イタリア代表デビューは2013年2月のオランダ戦まで待つことになった。それ以降は定期的に召集されている。

・アントニオ・カンドレーヴァ(ラツィオ)
リヴォルノで才能を開花させ2009年、22歳でイタリア代表デビューを果たした。2010年冬にはザッケローニ監督が指揮を務めるユヴェントスにレンタル移籍で加入した。しかし、その後2年間は不遇のシーズンを過ごし、イタリア代表からも遠ざかった。2012年、ラツィオへの移籍をきっかけに再ブレイク、かつての弱点であったスタミナの不足やミスの多さは克服され、万能型のMFへと成長した。様々なポジションでプレイすることができるが、本職はサイドMFである。

・マルコ・パローロ(パルマ)
今回召集されたパレッタやカッサーノらと共に、今季のパルマの躍進を支えた選手の一人。チェゼーナに所属していた2011年にイタリア代表でデビューし、EURO2012への出場も期待されていたが、それは見送られた。その後しばらく代表からは遠ざかっていたものの、2014年3月に復帰し、今回メンバーに選ばれた。イタリア代表に召集されている他のMFと同様に、万能型の選手であり、中盤からのダイナミックなシュートにが評価されている。今シーズンは35試合に出場し、8ゴールをマークしている。

・ロムロ(エラス/ヴェローナ)
ブラジル出身の26歳の選手で、ポジションを同じくする同郷のレジェンド選手カフーとよく比較され、その攻撃力は大いに期待されている。ダルミアンと同じくイタリア代表での出場経験はないが、今季のエラス・ヴェローナでの活躍(セリエA26試合6ゴール8アシスト)が召集に繋がった。今季は主に、4-3-3のMFとしてプレイした。


FW
・マリオ・バロテッリ(ACミラン)
15歳でプロデビュー、17歳頃からセリエA・インテルでプレイしていた。その後マンチェスター・シティーを経て、現在の所属チームのACミランへ。怪物的な破壊力を持ち、ピッチのどこからでもシュートを決めることが出来る。キング・ペレをして「世界最高のストライカー」と評されるが、精神的な未熟さは隠しきれず、レッドカードを受けて退場することも多い。

・チーロ・インモービレ(トリノ)
ユヴェントス・ユース出身の選手で、現在も保有権の半分はユヴェントスが所持している。2011-2012シーズンに出場機会を得るためにセリエBのペスカーラに移籍し、28ゴールで得点王に輝く。次のシーズンは不調が続いたが、今シーズンから調子を取り戻し、セリエAの得点ランキングで単独首位に立っている。今夏のボルシア・ドルトムントへの移籍が注目される。守備をも献身的に行うFWで、FWとして必要なあらゆる能力を高いレベルに持つ。

・マッティア・デストロ(ローマ)
ユース時代をインテルで過ごした後、アスコーリやジェノアを渡り歩き、2012年、1150万ユーロでローマへ移籍した。インモービレと同年齢の選手で、すべての年代のイタリア代表でプレイしてきた。今シーズンは負傷明けからゴールを量産し、たった14試合の出場ながら得点ランキングの上位に入り込んでいる。インモービレと同様に、あらゆる能力に長けたストライカーである。

・ジュゼッペ・ロッシ(フィオレンティーナ)
パルマ・ユース出身、10代の頃から「将来のイタリア代表を背負うFW」と高い評価を受けていた。マンチェスター・ユナイテッドを経てビジャレアルで才能を開花させると、2009年にイタリア代表に初召集される。2010年ワールド・カップのときは予備メンバーに選ばれるも、本戦に進むことはできず。その後は靭帯の怪我に悩まされ、ほぼ2シーズンを棒にふるった。リハビリ中の2013年冬にフィオレンティーナに加入し、2012-2013シーズンの終盤で復帰した。今シーズンは開幕からゴールを量産、かつての輝きを取り戻し、代表にも再び呼ばれるようになった。しかし、2014年最初の試合でまたも長期離脱を余儀なくされる。一時は引退の噂も囁かれたが、5月に入り復帰すると、最初の試合で2ゴールをマークした。ストライカーとしても、セカンドトップとしてもプレイでき、得点力の高さはイタリア代表の中でも一番かもしれない。

・アレッシオ・チェルチ(トリノ)
ローマ出身のセコンダプンタで、今季はインモービレと共にトリノの強力な攻撃を支えた。スピーディーなドリブルが売りの選手で、右サイドから中に入り込んでの左足のキックは、精度・威力ともに抜群だ。2013年3月にイタリア代表に初召集され、コンフェデレーションズカップのメンバーにも選ばれた。ミランへの移籍が噂される。

・ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)
ナポリ・ユース出身の彼は、ナポリ・ファンから最も愛される選手だ。2011-2012シーズンはペスカーラで過ごし、ヴェッラッティ、インシーニェと共にセリエA昇格に大きく貢献した。昨年のU-21欧州選手権では10番を務める。ポジションはセカンドトップで、おそらく今回のメンバーの中で最もドリブルの上手い選手だろう。2013年10月のイタリア代表デビュー戦でもその実力の高さを発揮した。ナポリのベニテス監督も、イタリア代表へ強く推薦している。

・アントニオ・カッサーノ(パルマ)
ローマ、レアル・マドリッド、ミラン、インテルと数多くのクラブを渡り歩いた。「悪童」の代名詞とされるほどにかつては精神的な未熟さが目立ったが、2009年頃からはまじめにサッカーに取り組むようになる。2010年ワールド・カップへの召集も大きく期待されたが、当時の監督リッピとの確執があり、メンバーから外れた。スピードやボディー・バランス、スタミナなどは持ちあわせてはいないものの、卓越したボール・テクニックを持って敵を圧倒する。EURO2012以降は代表から遠ざかっていたものの、今季のパルマでの活躍が評価され、代表にふたたび召集された。


今回落選した主な選手
GK ミランテ(サポートメンバーとして帯同)、マルケッティ
DF アストーリ、クリッシート
MF ジャッケリーニ、フロレンツィ、ポーリ
FW ジラルディーノ、オスヴァルド、ディアマンティ、エル・シャーラウィー、ベラルディ

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